体重増加恐怖症とは?症状・原因・治療法まとめ

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体重が増えることへの強い恐怖や過剰な嫌悪感を抱く「体重増加恐怖症(オベソフォビア)」は、痩せることへの執着とはまた異なるメンタルヘルス上の問題です。単なるスリム志向やダイエットの範囲を超え、日常生活や健康に重大な影響を及ぼすことがあります。

本記事では、「体重が増えることへの恐怖」をテーマに、診断基準、原因、症状、治療、日常での工夫まで、多角的に深掘りしていきます。

1. 体重増加恐怖症とは?

体重増加恐怖症(オベソフォビア、別名「pocrescophobia」)は、体重が増えることに対して強い恐怖感や不安を感じる「特定恐怖症(specific phobia)」の一種です。これは単に健康意識が高いという領域を越え、体重の増加=制御不能や自己嫌悪に直結します。たとえ実際に体重が減少傾向にあっても、「増えてしまう」という思考が支配的になる点が特徴です 。

体重増加恐怖症は、自身の体重が増えることに対して異常な恐怖や不安を感じる精神的な疾患です。この症状は、一般的なダイエットや健康的な体重管理とは異なり、極端な形で現れることがあります。

DSM‑5では正式な診断名ではありませんが、恐怖症の定義(脱出不能な恐怖、6ヶ月以上継続、回避行動)に該当します。


2. 主な症状とは?

体重増加恐怖症の症状は、心理的・行動的・身体的に多岐にわたります。

体重増加恐怖症の症状としては、食事制限や過度な運動、体重計への強迫的な依存などが見られます。患者は自身の体重を常にコントロールしようとし、体重が増えることを極度に恐れます。そのため、食事を制限したり、過度な運動を行ったりすることがあります。

また、体重計への強迫的な依存も見られ、毎日何度も体重を測定することが日常的になることもあります。

心理的症状

  • 体重増加に関する妄想的な不安。
  • 自分の体格を過剰に小さく評価し、「すぐ太ってしまう」と思い込む。
  • 食べ物・食事そのものが恐怖の対象となり、「食べたら体が変わる」ストレスを感じる。

行動的症状

  • 食事量を著しく制限する、カロリーを過度に計算する。
  • 食事を避けたり、持参するなど極端に管理する。
  • 過度な運動や回避行動(人前で食べない、食の場面を避ける)を行う。

身体的症状

  • めまい、動悸、胸痛、発汗などの不安症状。
  • 慢性的な栄養不良や過度な体重減少。
  • 過食と過度な排出(嘔吐や下剤)を繰り返すこともある。

Healthlineによると、妄想的な恐怖と体重減少行動が進むと、摂食障害や他の精神疾患を合併するリスクも高まります 。


3. 何が原因?発症メカニズム

体重増加恐怖症の原因は複数あります。社会的圧力やメディアの影響によって、理想的な体型や体重に対する固定観念が形成され、それに達しないことへの恐怖が生じることがあります。

また、過去のトラウマや自己価値感の低さも体重増加恐怖症の原因となることがあります。

これらの要因が組み合わさることで、体重増加恐怖症が発症する可能性が高まります。

環境・社会要因

  • メディアやSNSによる「痩せ=美/成功」という美意識の強調。
  • 家族や周囲に「太る=悪」「痩せるべき」という価値観が繰り返される文化的背景 。

遺伝的・心理的素因

  • 遺伝的に不安症や強迫性傾向が高い人はリスクが高まる。
  • 「完璧主義」や「自己統制欲求が強い」性格も関連。また、attachment anxiety(愛着不安)は恐怖を強め、過食行動を引き起こす可能性があります 。

トラウマ・過去の体験

  • 「太っている」と批判された、からかわれた経験。
  • 健康に関する不安体験が「肥満=病気・死」と結びつく例もあります。

4. 体重増加恐怖症と摂食障害の関係

体重増加恐怖症はしばしば摂食障害(特に神経性無食欲症:anorexia nervosa)のコア症状と重複します 。ただし、摂食障害では体重に対する深い歪んだ評価が中心にあるのに対し、恐怖症では「太ることそのもの」が恐怖の対象となり 得ます。

治療方針は似ていても、恐怖症としての認識や曝露型治療のアプローチが追加される点が違います。


5. 診断の視点

多くは精神科医や心理カウンセラーによる面接で「恐怖性・回避行動・持続期間(最低6ヶ月)」を確認します 。医学的検査で摂食障害や栄養状態もチェックし、鑑別が重要です。


6. 有効な治療アプローチ

認知行動療法(CBT)

  • 患者にとって「太る怖さ」を細分化し、論理的に挑む。
  • Exposure(曝露療法)では、「食べる」「体重を増やすイメージ」への段階的慣れを図ります。

仮想現実(VR)療法

漸増的曝露と行動療法

  • 食事の試練、カロリー表示のある食品を段階的に取り込む練習。
  • 食事の場面における瞑想や筋弛緩でパニック抑制。

薬物療法

  • CBTを補完する形でSSRIなどの抗不安薬が処方されることがあります。混合症状には適応可能 。

7. 日常生活での工夫

体重増加恐怖症を克服するためには、まず自己受容が重要です。自分自身を受け入れ、体重だけでなく他の要素でも自己評価を行うことが必要です。自己受容を促すためには、自分の良いところや成果を認めることが大切です。また、他人の意見や社会の美の基準に囚われず、自分自身の幸福を追求することも重要です。

健康的な食生活の確立も体重増加恐怖症の克服には欠かせません。食事制限や過度な運動は身体に負担をかけるだけでなく、心理的なストレスも引き起こす可能性があります。バランスの取れた食事を摂り、適度な運動を行うことで、健康的な体重を維持することができます。食事や運動に関する情報を正しく理解し、自分に合った方法を見つけることも重要です。

  • 食への焦点を外す:趣味や学びで心の余裕を持つ。
  • 段階的トレーニング:怖い食事を選び、無理のない範囲で体重計に乗る。
  • リラクゼーション習慣:深呼吸・筋弛緩・マインドフルネス。
  • 支援体制の活用:家族や友人に理解をお願いし、「見守り」の仕組みをつくる。
  • 情報収集:正しいダイエットと体重管理の知識を学び、恐怖からの解放を図る。

8. 社会的理解の重要性

体重増加恐怖症はまだ認知度が低く、「意志が弱い」「贅沢だ」と誤解されがちです。しかし、恐怖症として治療対象であるとの認識が普及することが支援の第一歩となります。

学校や職場でも正しい知識と「痩せ美」神話への警戒が求められます。偏見によって回復が遅れることのない環境づくりが大切です 。


【まとめ】

  • 体重増加恐怖症(オベソフォビア)は「太ることの恐怖」に基づく特定恐怖症。摂食障害と重なる部分がありつつも、恐怖心の対象が明確です。
  • 主な治療法はCBT(特に曝露療法)、虚廷現実の活用、漸増的行動変容、補助的な薬物療法など。
  • 日常生活では段階的な曝露と支援体制が鍵。社会全体の偏見を解消し、当事者を孤立させない環境が必要です。

【参考になるサイト】

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