自己愛性パーソナリティ障害(NPD)とは?
自己愛性パーソナリティ障害とは、自分が他者よりも優れている特別な存在である考えから自分の能力を過大評価し、他者の能力を過小評価してしまうパーソナリティ障害の一種です。

NPDという略称のNは、ナルシストのNです。
患者は、自分の重要性に反して他者の存在価値や欲求を無視してしまいがちなので、対人関係において支配的、優越的な態度を取ってトラブルを引き起こす傾向があります。
また、自分自身が特別な存在だという自尊心や賞賛・承認欲求を損ねられることとを極度に嫌がり、自己防衛本能から他人を利用したり、他人を傷つけることがあります。
揺るがない自己肯定感から、他者からの批判や非難に対する強い耐性を持ち、メンタルが強いという評価を受ける人もいます。

自己愛性パーソナリティ障害の方の中には、ワンマン経営などの場では強力なリーダーシップを発揮し、成功をおさめる方もいます。
自己愛性パーソナリティ障害の原因
この障害の原因は正確にはわかっていませんが、少なくとも遺伝的要因と環境要因の両面が関係していると言われています。
遺伝的要因
環境要因
幼少期に主に家庭内で受けた教育が、自己感覚の健全な形成に影響を及ぼすという前提のもとで、自己愛性パーソナリティ障害を発症してしまう方は、この幼少期の家庭環境に何等かの原因がある可能性が高いと言われています。
例えば、過度に批判され続ける幼少期を送った人は、自分の存在を特別なものと信じ込むことで自分の精神を保っていたりします。逆に、過度に甘やかされ賞賛され続ける幼少期を送った人は、無条件で受ける賞賛が当たり前だと思い込んだまま大人になっていたりします。
自己愛性パーソナリティ障害の診断
この障害は米国精神医学会が発行している精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)第5版(DSM-5)の基準にもとづいて診断されます。
DSM-5
DSM‐5では、以下の項目のうち、5つ以上が当てはまる場合に自己愛性パーソナリティ障害が疑われます。
- 自分自身の存在の重要性や、才能・能力の高さについて根拠のない自信がある。
- 業績、権力、階級、知能、容姿の美しさなどに対しての価値観が異常に強い
- 自分は特別であり、地位の高い人とのみ付き合うべきだと信じている。
- 自己中心的で傲慢さや横柄さが強く見られる
- 他者を理解する共感性に欠けている
- 特権意識がある
- 他者に嫉妬している、または他者が自分に嫉妬していると感じている
- 無条件の賞賛・承認を受けたがる
- 目標達成または相対的高評価獲得のために他者を利用する
自己愛性パーソナリティ障害の治療
自己愛性パーソナリティ障害の治療は、他のタイプのパーソナリティ障害と同様のアプローチが行われており、カウンセリングや心理療法による思考パターン、行動パターンの修正と、症状軽減のための薬物療法を組み合わせる方法が一般的です。
心理療法・カウンセリング
カウンセリングや心理療法は、パーソナリティ障害の治療に効果的なアプローチです。専門家とのセッションを通じて、自己認識を高め、思考や行動パターンを変えるための具体的な戦略を学ぶことができます。また、対人関係の改善にも焦点を当てたセラピーが行われることもあります。
認知行動療法(CBT)
認知行動療法では、妄想的な信念や解釈を扱い、現実的な思考や行動への修正を促します。具体的な手法としては、思考パターンの否定や検証、現実的な証拠の探索、新しい行動パターンの練習などがあります。これにより、患者は独自の思考に囚われず、現実的な視点を持つことができるようになります。
対人関係療法
対人関係療法は、人間関係の困難に焦点を当て、患者の社会的な関係やコミュニケーションスキルを改善することを目指します。患者はしばしば他人との関係に不快感、不信感、疑念を抱き、孤立感を感じることがありますが、対人関係療法では、信頼関係の構築やコミュニケーションスキルの向上を通じて、患者がより健全な関係を築くことを支援します。
日記、自己分析、自己啓発本などを通じた自己認識の向上
自己認識の向上は、パーソナリティ障害の克服に向けた重要なステップです。自分自身の思考や感情に対して客観的に向き合い、独自の信念や思い込みを見極めることが求められます。自己認識を高めるためには、日記をつける、自己分析を行う、自己啓発の本を読むなどの方法が有効です。
ストレスマネジメント
日常生活でのストレス管理やリラクゼーション法の実践も、パーソナリティ障害の克服に役立ちます。ストレスが増えると独自の思考や行動が増える傾向があるため、ストレスを軽減するための方法を学ぶことが重要です。リラクゼーション法やマインドフルネス瞑想などの実践は、心身のリラックスを促し、妄想的な思考パターンを和らげる助けとなります。

誰でも取り入れやすいコーピングリスト法によるストレスマネジメントもおすすめです。
薬物療法
症状の軽減や安定化を目指して抗精神病薬などが使用されることがあります。一般的には、抗精神病薬や抗不安薬が使用されることがあります。
抗精神薬
抗精神病薬は、幻覚や妄想などの症状を軽減する効果があります。
抗不安薬
抗不安薬は、不安や緊張を和らげる効果があります。

ただし、薬物療法は症状の管理に役立つものの、根本的な問題の解決にはなりませんので、心理療法との併用が推奨されます。
自己愛性パーソナリティ障害の治療法は、一般的に心理療法と薬物療法の組み合わせが使用されます。心理療法は、患者の思考や行動のパターンを変えることを目指し、認知行動療法や対人関係療法が効果的です。
サポートグループ、患者会の活用
インターネット上には、自己愛性パーソナリティ障害に関する情報や経験談を提供するウェブサイトやオンラインコミュニティもあります。同じ悩みを持つ人々との交流やサポートグループへの参加も、理解と共感を深めてストレスや症状の軽減のための有効な手段です。
他の種類のパーソナリティ障害
パーソナリティ障害には10種類が確認されています。
このタイプのパーソナリティ障害の特徴と原因にしっくりこない方は、他の9種類のパーソナリティ障害についても確認してみるとよいでしょう。


